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【1】
キレイな顔したコだなぁ…って第一印象はそんな感じかな。
話をする時にしっかりと視線を合わせてくるのは、なんとなく小学校の時先生に言われた『人の話を聞くときは相手の目を見て聞きなさい』って言葉を思いだして真面目なコなのかなって最初は思ったよ。
でも真面目っていうのとはちょっと違うって事はすぐに解ったけど…。
一緒に自己紹介をした高橋には「個性的なしゃべり方がかわいいよねー」なんて言ったかと思うと、後ろにかくれるようにしてた梨華ちゃんを見て
「後ろのコもかわいいですねぇ、恥ずかしがり屋さんなんだ?」
なんて、突然なっちの耳元に顔を近づけて囁いて来たり…。
なっちのことも
「年上とは思えないなぁ。ホントかわいいって言うのがピッタリですよね」
って、人懐っこい笑顔でカワイイカワイイって誉めまくる。
「なして、そんな事言うかなぁ…?」
なっちはちょっとふざけて膨れっ面をつくってみたけど、たぶん耳まで紅くなってたと思う。
だって、恥ずかしいっしょ?普通、憶面もなくそんな事言われたらさ。けど、吉澤さんは真顔で
「かわいいコにかわいいって言ってるだけですよ、本当のコト言って何が悪いんですか?」
って、当たり前のように返されちゃう。
「なっちゴメンね、なんか三年ぶりに会ったらキャラ変わってて従姉のアタシもびっくりしてんのよ」
隣に座ってた圭ちゃんも苦笑顔だけど、吉澤さん本人は全然平気そうに笑顔を崩さない。
そりゃ女の子だもん、かわいいって言われたらうれしいっしょ誰だって。
でもさぁ、眩しいくらいの笑顔で目をのぞき込まれるみたいに見つめられてそんな事言われたら、ただの誉め言葉以上の意味があるんじゃないかって誤解されちゃうよ?
いやぁ、なっちはそんなことないよ…そんなことないけどさ。
誉められて素直に喜んでる高橋、ろくに話してもいないのにこれ以上ないってくらい舞い上がっちゃってる梨華ちゃんを横目に見ながら早くこの場を離れなくっちゃって、なんでだか居心地が悪くてたまらない。
ただの口癖みたいなもんなんだよ、誰にでもカワイイって言うんだよ…嬉しいけど、ダメダメ、絶対にダメだよ。
心の中で警報が鳴ってる、今まで何度も同じようなパターンで凹んでるんだもん…優しい笑顔でみんなの人気者、そんな人がなっちのこと相手にするワケないっしょ。
小学校の時も中学校の時だって、なっちがいいなぁって思う人は大抵クラスの人気者で、だから友達もみんなその人のこと好きになっちゃって…タイミングが悪いのかなぁ「なっち、おねがい手紙渡して」なんて頼まれちゃう。
断ればいいのに言えなくてなんとなく引き受けちゃって家に帰って一人落ち込んで…そんな時は自分がたまらなく嫌いになっちゃってさ。
もう同じ失敗は繰り返さないって誓ったっしょ?
今度もきっとおんなじだよ?こんなにキレイで優しい人はなっちには縁のない人なんだ…って自分で自分を懸命に説得してみた。
会ったばかりなのに高橋も梨華ちゃんもすっかり吉澤さんばかり気にしてる、他のコたちだって同じなんだよ、きっと。
食堂を出て一足先に帰って来てるはずのヤグチや中学生たちを探してごっつぁんの部屋に行くと案の定みんなして吉澤さんの話題で盛り上がってる所だった。
小川と紺野の中学生コンビは寮生には今までいなかったボーイッシュキャラの吉澤さんが物珍しいっていうのもあるんだろうけど、ヤグチの方はかなり入れ込んじゃっててすっかりその場を仕切っている。
「みんなぁ、よっすぃーって呼ぶこと!堅苦しいの嫌だって言ってたから」
なんて言って、「そんなの無理ですぅ」って言う小さいコたちを困らせてた。
「なんだよー、いいじゃん学校の先輩後輩じゃないのに…ま、いいや!なっちと石川とごっつぁんは呼べるよね」
食堂にいるときからオドオドした態度のままの梨華ちゃんは人の話なんか聞いてないみたいだし、ごっつぁんは妙に不機嫌でヤグチは自然となっちに向かって話すような形になる。
『よっすぃー』
心の中でそっと呼んでみる、さっき見たばかりの眩しい笑顔で振り返って『なんですか?安倍さん』って返事をしてくれるよっすぃー…。
「なに顔赤くしてんだよぉ!」
ヤグチに突っ込まれて我に返った。
「な、なっちのほっぺが赤いのは元からっしょ」
あわてて誤魔化したけど、なっちウソが下手だからきっとヤグチにはバレバレだね。
「さ、もう晩ご飯の時間になるから行くべ」
他のコたちにまで変に思われない内に話を切り上げたかった。
よっすぃーの隣を争って駆けていくみんなにテレ隠しで「若いねぇ」なんて呟きながらゆっくりとごっつぁんの部屋を出る。
なるべく、ゆっくりゆっくり赤い顔が元に戻るように、食堂に行ったら誰にも気付かれないように…そう念じながらホントにゆっくりと歩いた。
片側に4人ずつ8人が座る形のテーブル。ゆうちゃんは一人テーブルの短い方の縁に席を作って座っている。
なっちが食堂に付いたときには、もうヤグチの仕切りで席順が決まってた。
入り口に近いサイドの右端がヤグチでその隣がよっすぃーの為に空けてある、次が圭ちゃん。
なっちの席は圭ちゃんの隣…つまりは一番左のはじっこ。
向こう側の席はヤグチの向かいに小川、続いて紺野、高橋、なっちの向かい側はまだ空いているけど、そこが梨華ちゃんの席ってことらしい。
なんか淋しいけど、ここならよっすぃーと目が合うこともないだろうし安心かな…また顔を赤らめたりしたらヤグチに突っ込まれちゃうからね。
でも、なぜか梨華ちゃんと一緒にやって来たよっすぃーはわざわざ他のテーブルからイスを引きずって来てなっちのお向さんに座った。
紺野たちが少しずつ詰めてスペースは問題なかったけど、ヤグチはやっぱり少し不機嫌な顔してる。
食事中、別に意識して見てたワケじゃないけど真正面だから目が合っちゃうっしょ?その度によっすぃーが優しく笑いかけて来てさ…梨華ちゃんと手繋いでたクセに、と思いながらもなっちの心はザワザワ騒がしくなっちゃう。
ほっぺもなんだか熱い気がしてせっかく気持ちを落ち着かせたのに、またからかわれちゃうんじゃないかってハラハラしたり、時々話しかけてくるよっすぃーの声にドキドキしたり…。
食事が終わるとよっすぃーの周りにみんなが集まって何か騒いでいたけど、なっちは逃げるように食堂を出てきちゃった。
だって、気付かれたら恥ずかしいじゃん、ただ笑顔を見せてるだけのよっすぃーにドキドキして顔赤くしてるなんてさ。
部屋に戻ってすぐにバスルームに直行。
冷たい水で顔を洗って鏡で顔色を確認してたら、携帯が鳴った…ヤグチ専用のメロディ。
声が裏返らないように深呼吸してから出てみると、電話の向こうは何故か小川の声。
みんなでよっすぃーの部屋にいるから一緒にどうかって…後ろの方でヤグチ独特の笑い声に混じって、よっすぃーが「安倍さんとももっと話したいから」って言ってるのが聞こえた。
少し迷ったけど、みんなで話すくらいいいよね…よっすぃーもなっちと話したいって言ってるし、ってまたきっと赤面しちゃうクセに「今から行くから」って口が勝手に動いちゃった。
よっすぃーの部屋はなっちと一緒の5階だけど501と511で一番はじっこ同士、廊下を半分まで行って少し戻ってって、ウロウロと行ったり来たりして、なんかなっち変だよね!?。
顔を赤くしてるコトよりずっと怪しい行動…誰かに見られたらそっちのほうに突っ込まれちゃうね。
意を決してよっすぃーの部屋のドアを開けようとノブに手をかけて、深呼吸。
なっちが思い切ってドアを開けたのと部屋の中でドッと笑いが起こったのがほとんど同時で、びっくりしちゃって…なっちはしばらく入り口に立ったまま動けないでいた。
4−【2】←・→5−【2】
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